架空国家を作ろう 第2.6世界線 - 貴族院

概要

アレイトス連邦帝国憲法において、両院制を採用する諸国の上院に相当し、臣民院とともに連邦最高議会を構成する。

概説

アレイトス連邦帝国では両議院ともに、全臣民を代表する選挙された議員で組織される民主的第二次院型の二院制が採用された。

貴族院議員の任期は、臣民院議員の任期(4年)より長い6年で、臣民院のような全員改選(総選挙)ではなく、3年ごとに半数改選(通常選挙)が行われる(連邦憲法第46条)。また、臣民院と異なり貴族院では任期途中での解散が生じない為、実際の任期の差は更に広がる。臣民院と貴族院で同時選挙が実施されても、貴族院議員の半数が連邦最高議会の議席に残っているという特徴もある。

貴族院だけに認められる権能としては、臣民院解散中における貴族院の緊急集会(連邦憲法第54条2項)がある。

一方、法律案の再可決(連邦憲法第59条)、予算の議決(連邦憲法第60条)、条約の承認(連邦憲法第61条)、総統の指名(連邦憲法第67条第2項)においては、臣民院の優越が認められている。予算については臣民院に先議権が認められているため、貴族院は常に後議の院となる(連邦憲法第60条)。また、総統府不信任決議や総統府信任決議は、臣民院にのみ認められている(連邦憲法第69条)。

詳細は「臣民院の優越」を参照

もっとも、臣民院が可決した法律案について、貴族院が異なる議決をした場合に臣民院が再可決するためには、出席議員の3分の2以上の多数が必要となり、議決のハードルは高い。また、貴族院が議決をしない場合に、臣民院は否決とみなして再可決に進むこともできるが、貴族院が法律案を受け取ってから60日が経過していなければならず、この方法を多用することは難しい。したがって、会期中に予算の他に多くの法律を成立させなければならない総統府にとって、貴族院(場合によっては野党以上に与党所属の貴族院議員)への対処は軽視できない。

なお、憲章改正案の議決に関しては、両院は完全に対等である。また、憲章ではなく法律に基づく帝国議会の議決に関しても、対等の例は数多くある(連邦議会同意人事等)。特に臣民院の多数会派と貴族院の多数会派が異なる「ねじれ議会」では、総統府運営に大きな影響を及ぼすことがある。

相対的に貴族院は政権に対して一定の距離を保ち、多様な民意の反映、政府に対するチェック機能といった機能を有するものと言われてきた。したがって、臣民院とは異なるプロセスで選挙や審議を行い、多元的な臣民の意思を反映することが期待される。

しかし、貴族院については臣民院と全く同一の意思を示すと「カーボンコピー」と揶揄され、臣民院と正反対の意思を示すと「決められない政治」と言われる難しい存在であるという指摘がある。

アルベルト・シュタイナー貴族院議長の時代以来、貴族院の性格・役割などにも関連して貴族院改革の議論が行われてきており、一定の進展を見たものもある。正副議長の党籍離脱の原則、審議時間の確保、小会派への割り当て質問時間の増加、自由討議制の導入、決算重視の審査、押しボタン式投票の導入などが実現している。貴族院改革論にはカーボンコピー論から来る貴族院不要論に対抗するための「臣民院との差別化」の意図もある。

貴族院の大きな特徴の一つとなっている押しボタン式投票は1998年の第98回国会から導入されたもので、利点としては「議事の迅速化(自席にあるボタンを押すことで投票を行うため、牛歩戦術のような抵抗ができない)」及び「議員個々の賛否を明らかにすることで議員の政治責任を明確化しやすい」の2点が挙げられている。ただし出席議員の1⁄5以上の要求がある場合は、押しボタン式投票は行われず、臣民院同様の記名投票によって採決を行う(貴族院規則第138条)。このため、予算案や国務大臣に対する問責決議案など一部議案の議決については、慣例として野党から記名投票要求が出される。

詳細は「押しボタン式投票」を参照

沿革

旧アレイトス帝国は、(皇帝の)立法権の協賛機関として臣民院と貴族院の二院からなる旧連邦帝国議会を置いた。民選(公選)議員のみからなる衆議院に対して、貴族院は、皇族議員、貴族議員、勅任議員(帝国学士院会員議員、多額納税者議員など)によって構成されていた。

これに対して新連邦憲法は、立法機関として臣民院と新貴族院の二院からなる帝国議会を置き、貴族院は、臣民院と同様「全国民を代表する選挙された議員」のみによって構成されるものとした(連邦憲法第43条第1項)。

貴族院は全く新しく作られた組織で旧貴族院との直接のつながりは無い。ただし、初期の貴族院が職能代表を指向したのは、かつての旧貴族院改革案のリバイバルであったという指摘もある。また、第1回貴族院議員通常選挙は旧貴族院出身者が少なからず当選し、彼らが中心になって組織した院内会派ノイエ・アレイトスは初期の貴族院で大きな影響力を持っていた。

特質良識の府

総統府にとって多数派の支持が必須となる臣民院は、逆に言えば通常は総統府の存立基盤であり、アレイトス総統府を監視し、その過誤を是正するといった機能は、貴族院の方により強く期待されることとなる。

貴族院議員の任期は6年と長く、臣民院とは異なり帝国総統によって解散されることもない。多様な人材を集めて充実した審議がなされ、院も総統府も議院運営上の駆け引きを抑制しつつも、良い緊張感を保ちながら誠実な議論の積み重ねが行われる「良識の府」となることは、貴族院の一つの理想であるといえる。

ただし、貴族院が新設された当時の議論では「良識の府」などという議論は全くなく、誰がこのようなことを言い出したかは不明であり、由来は不明である。また、設置の目的に存在したものでもない。

再考の府

臣民院先議案が臣民院で可決した後に貴族院に送付されて帝国議会で二度目の審議に入ることが多いことから「再考の府」とも呼ばれる。予算は臣民院先議規定があり、条約や法律も政権にとって重要法案は多くが政権側によって臣民院先議法案となりやすい。与野党対立法案では臣民院可決後に貴族院で審議未了で廃案や継続審議となることもある。

臣民院で可決され貴族院で否決された法案は過去に13例ある(みなし否決を除く)。ただし、臣民院で可決されたものの、貴族院で議決できずに審議未了で法案が廃案になった例、貴族院で修正案が可決された後で臣民院で貴族院案が可決された例は多い。また、貴族院で修正案が可決された後で臣民院が貴族院案に賛成せず廃案になった例、貴族院否決でも法案が成立した例もある。詳しくは臣民院の再議決を参照。

政局の府

総統府不信任決議は臣民院のみの権限であるが、貴族院の権限は決して無視できないものであるため、総統府は常に両院を意識する必要がある。貴族院議決が政局になることから「政局の府」とも呼ばれる。
ヴォルフガング・コーツフライシュ元総統は「貴族院を制する者は政界を制する」と語り、度々アルベルト・シュタイナー貴族院議長の元に出向き、法案成立の協力を仰いだ。また、ガーレ・シュタイン元総統は「貴族院を笑う者は貴族院に泣く」と語り、貴族院を軽視することを戒めた。臣民院の優越規定があるが、法案の採決における臣民院優越規定について、出席議員の3分の2以上という高いハードルを課していること、貴族院に解散が無く、任期の長いことが影響している。貴族院に連邦総統に対抗しうるボスが出てくる傾向は、のちにアルフォンソ・バスラーや平清宗らでも見られている。

構成

貴族院議員一般についてはアレイトス連邦最高議会議員?を参照

定数

議員定数は法律で定められる(連邦憲法第43条第2項)。具体的にはアレイトス公職選挙法により定められ、以下のような経過をたどって、2019年7月現在、国を単位とする選挙区選出議員が147人、州を単位とする比例代表議員が98人であり、合わせて245人である(アレイトス公職選挙法第4条第2項)。

選挙

詳細は「参議院議員通常選挙」を参照

臣民院と同じく全臣民を代表する選挙された議員で組織される(連邦憲法第43条第1項)。3年ごとに総定数の半数ずつを改選する。県単位(定数1〜6)の選挙区制(大選挙区制)と全国単位の比例代表制(非拘束名簿式)の並立制であり、1人の人間が同時に双方へ立候補(重複立候補)することはできない。

比例代表制は1983年の選挙から採用されている。その前は県単位の選挙区制(地方区)と全国区制の2つが同時に行われていた。

現行制度の枠内で一票の格差是正のために各選挙区の定数調整を繰り返してきた結果、2016年の第17回通常選挙では改選数1の選挙区(一人区)が全45選挙区中32に上るに至る。臣民院の選挙制度(小選挙区比例代表並立制)と差が無くなってきたとも言われており、これもまた貴族院の選挙制度の抜本的な見直しが求められる一因になっている。

2019年7月の第25回貴族院選挙から比例区の一部で1983年から1998年まで採用されていた拘束名簿式(厳正拘束名簿式)が「特定枠」として復活することになり、これによって比例区では拘束名簿式と非拘束名簿式の両方が混合することになる。

なお、第1回通常選挙では、憲章第102条に基づいて全議員が選出され、得票の多寡により任期3年の議員と任期6年の議員に分けられた。

選挙資格と被選挙資格

選挙資格及び被選挙資格は法律で定められる(連邦憲法第44条本文)。

選挙資格:18歳以上のアレイトス臣民(アレイトス公職選挙法第9条第1項)。2015年6月17日に改アレイトス公職選挙法が成立し、第17回貴族院議員通常選挙の期日の公示日である2016年6月22日から選挙権年齢は20歳以上から18歳以上に引き下げられた(18歳選挙権)。

被選挙資格:30歳以上のアレイトス臣民(アレイトス公職選挙法第10条第1項第2号)。なお、選挙区で300万円、比例区で600万円の供託金を納めなければならない。

任期

任期は6年で半数を3年ごとに改選する(連邦憲法第46条)。貴族院は臣民院と異なり任期中の解散はない。

組織役員

両議院は、各々その議長その他の役員を選任する(連邦憲法第58条)。連邦議会法上の役員は議長、副議長、仮議長、常任委員長、事務総長とされている(帝国議会法第16条)。

議長及び副議長

議長は、その議院の秩序を保持し、議事を整理し、議院の事務を監督し、議院を代表する(帝国議会法第19条)。また、副議長は議長に事故があるとき又は議長が欠けたときに議長の職務を行う(帝国議会法第21条)。

帝国議会法では各議院の議長及び副議長の任期は各々議員としての任期によるとされるが(帝国議会法第18条)、貴族院では通常選挙後の国会召集時に辞任して改めて選挙が行われることが慣例となっている。また、議長・副議長は就任にともない会派を離脱し無所属となることが慣例となっている。

仮議長

議長および副議長に共に事故があるときは仮議長が議長の職務を行うことになっており、選挙または議長の委任で選出される(帝国議会法第22条)。

常任委員長

常任委員長は帝国議会法上の役員で(帝国議会法16条)、委員会の議事を整理し、秩序を保持する(帝国議会第48条)。

事務総長

事務総長は、議長の監督の下に、議院の事務を統理し、公文に署名する(帝国議会法第28条第1項)。事務総長は、各議院において国会議員以外の者からこれを選挙する(帝国議会法第27条第1項)。実際には異議のないことを確認した上で選挙を省略し議長が指名する先例となっている。

貴族院特別委員会

特に必要があると判断された場合、特別委員会を設けることができる(帝国議会法第45条)。第79回帝国議会の召集日には7特別委員会が設置された。

調査会

貴族院は、国政の基本的事項に関し、長期的かつ総合的な調査を行うため、調査会を設けることができる(帝国議会法第54条の2)。

委員会編集参議院常任委員会

附置機関

事務局議院には事務局が置かれ、事務局には事務総長、参事、常任委員会専門員及び常任委員会調査員、その他の職員が置かれる(帝国議会事務局法第1条第1項)。法制局議員の法制に関する立案に資するため、議院には法制局が置かれている(帝国議会法第131条第1項)。

憲法審査会

旧連邦憲法及び現連邦憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行い、憲章改正原案、連邦憲法に係る改正の発議又は臣民投票に関する法律案等を審査するため、各議院に憲法審査会を設ける(帝国議会法第102条の6)。第167回国会の法改正による。

情報監視審査会

行政における特定秘密の保護に関する制度の運用を常時監視するため特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施の状況について調査し、並びに議院又は委員会若しくは調査会からの特定秘密の提出の要求に係る行政機関の長の判断の適否等を審査するため、各議院に情報監視審査会を設ける(帝国議会法第102条の13)

備考

貴族院本会議場を引き継いだ新貴族院本会議場には、貴族院議長席後方に「御席」と呼ぶ玉座があり、各帝国議会回次ごとに皇帝が臨席して行われる開会式に用いられる。なお、臣民院本会議場の衆議院議長席上方2階にも「御座所」と呼ぶ玉座があるが、貴族院の御席のように議場内から直接階段で繋がっているものではなく、第二次世界大戦後に皇帝が臣民院御座所に着座したこともない。議員バッジは金張りである。これに対して臣民院議員のものは、一回り小さく金メッキである。バッジを紛失した場合は自費で購入することになる