はじめに
本映画は2020年7月の第三次欧州大戦、ヨーロッパ戦域におけるブランデンブルクの敗戦を描いた作品である。一部史実とは多少異なる表現があるが、ご了承願いたい。
(注:本作品の時系列は2.6世界線の1日4日制に基づいている)
本編
2020年9月6日
ブランデンブルク帝国がエーレスラント連合王国に宣戦布告を行った。美しいミュンヘンの街には帝国旗が掲げられ、戦地へ出征する兵士達が笑顔で街を行進していた。
ブランデンブルク軍の参謀本部を始め、政府官僚や高級将校のほぼ全員が勝利を信じて疑わなかった。ブランデンブルク皇帝、ヴィルヘルム6世は言った。「帝国(Reich)が負ける事はない。今日この日より、欧州の地に大ヨーロッパ帝国が建国されるのだ。」…。
同年9月10日
「そんな…。」ヴィルヘルム6世は呟いた。
南のオスマン=イスラム共和国連邦がブランデンブルク帝国に対し宣戦布告を行った。
「南部には国境警備隊しか配備してない。クソッ!」ファウスト陸軍大臣は叫んだ。北部戦線では膠着、南部戦線では敵軍が凄まじい勢いで帝国の領土を掌握して行き、各前線では友軍が少しづつ、だが着実に各個撃破されて行った…。
同年9月14日
オスマン軍、エーレスラント軍の爆撃機の飛来する回数が徐々に増えて来た。が、帝都にはまともな対空戦力がなかった為、対処ができなかった。この日、既にオスマン軍はベネルクスを目指して西へ侵攻し、エーレスラント軍と合流しようとしていた。
「何故だ…何故帝国が負ける!帝国は正義!正義が悪に屈する事などあってはならない!!」ヴィルヘルム6世の精神状態は日に日に悪くなって行った。
同年9月18日
数日前からミュンヘンには連合軍の爆撃機が飛来し、美しい街を焼き払って行った。マイヤー将軍は可能な限りの自国民や滞在中の外国人を国外に逃がす為、麾下の部隊に避難民の輸送や警護を行うように命じた。彼は元牧師だった為、十字架を握り、トラックに乗り空港に向かう避難民達一人一人に祈りを捧げていた。しかし彼は他人の心配ばかりしすぎていて、自分の心配はしていなかった…。
ファウスト陸軍大臣は自身の書斎にいた。
「もはや…鷲は死んだのだ。」彼はそう言うと、護衛の兵士に退出するように言い、1人になった部屋のソファに座った。彼は愛用の拳銃を取り出し、銃口を自身の顬に当てると、そのまま静かに引き金を引いたのだった。
同年9月22日
オスマン軍は宮殿に突入した。警護の将官たちは必死に抵抗したが、その甲斐もなく、オスマン兵たちは皇帝の執務室に入った。ヴィルヘルム6世とその家族はオスマン兵に引きずり出され、トラックでローマに連行された。皇帝一家は二度と祖国の土を踏むことが出来なくなったのだ。
この後、ブランデンブルク帝国は降伏し、第三次欧州大戦のヨーロッパ戦域における戦闘は終了した。