- 完全機密かつ、冷却系を閉鎖循環方式とすること。
- 4セグメントに分け、うち2室は外気圧よりも常に500hPa以上低圧であること(陰圧式)
- 新鮮な外気を送気する回路と、宇宙服に対応したプラグインを陰圧室に備えること
- 排気を完全に分解できる排気処理装置を備えること
- 室温は-60℃〜55℃の間で調整可能なこと
- 緊急時に備え、レッドゾーンの除染を行うための放射線灯と紫外線灯を陰圧室に備えること
など、冷凍倉庫として用いるにはあまりにも不適当な仕様であった。ロッテルダム・トリビューンは当初、NEが架空のハイスペックな仕様を盛り込み、高額の見積もりを算定した不正受注であると報じていた。しかし、この巨大な冷凍倉庫の建設予定地がアラビア連邦の【xxxxx】という事実が判明する。1965年11月2日、トリビューンに掲載された、ブリジッド・マーキュリーと名乗る市民の『仮説』は40年前の惨劇を市民に思い出させるには十分過ぎるものだった。曰く
「政府はArctica株を現在も保有しており、冷凍倉庫の名を借りたウイルス研究施設を含めてアラビア連邦に譲り渡そうとしているのではないか。感染したホッキョクウサギを酷暑のオスマン連邦に適応・順応させるための施設と考えれば、これらの不適切な仕様も全て説明できる」
この報道は直ちに政府によって否定され、社員Gが持ち出した資料は「捏造」だと
ノーマン・インダストリーズCEOも表明している。翌日にはオスマン連邦政府も関与を否定。一社員の狂言として終わった本事件は、あまりにも詳細かつ写実的であり、細菌兵器が貧者の核兵器として使用される可能性を再び世界に示したマイルストーンとして、エルニシア史に記録されている。なお、エーレスラント衛生省が1968年に定めたバイオセーフティレベル4施設(最高危険度の病原体取扱施設)の規格仕様には
- 4セグメントに分け、うち2室は外気圧よりも常に500hPa以上低圧であること(陰圧式)
- 新鮮な外気を送気する回路と、宇宙服に対応したプラグインを陰圧室に備えること
- 排気を完全に分解できる排気処理装置を備えること
などの基準が設けられており、NE文書の『奇妙な仕様』と一致する部分も少なくない。この点に関して説明を求められたエーレスラント政府は「感染予防のための標準的対策であり、研究者の間では『常識的』な規格である。NE文書と一致することは何ら不自然ではない」と釈明している。ただし、バイオセーフティレベル4に相当する施設は当時世界のどこにも存在しておらず、核燃料製造施設などの基準を援用したとしてもこの説明は不適当だと
コペンハーゲン工科医科大学産業防疫研究室のダダ・ハリス教授が指摘している。