架空国家を作ろう 第2.6世界線 - 「はじめての空母」(四国連合共和国国防省版)
本ページは四国連合共和国国防省が作成したパンフレットです。
四国市民の皆様に空母へのご理解をいただくためのものですが、海外の方も自由に閲覧できます。

目次



空母とは何なのか

平たく言うと、海の向こうを攻撃する手段です。航空戦力を海の向こうに運び、敵国の艦隊や沿岸を攻撃させるための艦です。
空母は主として短距離離着陸機(STOL)を運用します。
ヘリコプターを主として運用するものは「ヘリ空母」、ヘリコプターと垂直/短距離離着陸機(V/STOL)を主として運用するものは「軽空母」と呼ばれます。この2つは空母とは別枠扱いになります。対潜戦や近接航空支援を主任務としており、運用法が空母とは根本的に異なります。

自国の沿岸で戦うのならば、空母は不要です。陸という不沈空母があります。空軍を陸上から飛ばせます。
ですから、陸から遠く離れた場所で航空戦をやりたいという奇特な国だけが空母を保有します。

空母航空隊とは何なのか

WW2戦以降、航空戦力は海軍作戦の主力になりました。海軍の航空戦力は2種類あります。1つは陸上基地を拠点とする「基地航空隊」、1つは艦艇を拠点とする「艦上航空隊」。むろん、空母航空隊は艦上航空隊です。
空母航空隊と他の艦上航空隊の違いは目的です。ヘリ空母の艦上航空隊は主に対潜哨戒、軽空母の艦上航空隊は主に近接戦闘支援と対潜哨戒。つまり、潜水艦潰しや陸上部隊支援のための戦力です。しかし、空母航空隊は違います。戦闘/攻撃機を何十機も搭載し、圧倒的な火力で敵を撃滅します。防衛や支援ではなく、攻撃のための航空隊なのです。

何のために空母を持つのか

あらゆる兵器に役割と目的が与えられています。空母は「空母にしかできないこと」をやるための兵器です。

戦術・作戦上の理由

外洋の向こうを攻撃するため。これに尽きます。空母は外洋を超えられる移動航空基地、航空隊を海の向こうに運ぶ手段なのです。

沿岸や周辺海域のみで戦うなら空母は不要です。
陸から航空機をバンバン飛ばせます。空母はたかだか数十機しか搭載できません。そんなものに大枚を費やすぐらいなら、陸上に航空基地を作りまくるほうがずっと安上がりです。

「空母に対抗できるのは空母だけ」というのは、外洋に限った話です。沿岸や周辺海域では異なります。空母の戦力は要するに搭載機の戦力です。敵が送り込んでくるであろう空母航空隊以上の空軍を用意できるならば、空母を持たない国でも空母に対抗できます。外洋での展開を想定しない限り、20世紀の建艦競争のようなことを空母でやる必要はありません。

戦略・政治上の理由

外洋における支配力の確保。これに尽きます。現代においては、航空優勢抜きに制海権を海上支配することは不可能です。空母は外洋において航空優勢を確保する唯一の手段です。つまり、太平洋、大西洋、インド洋の海上支配は空母にかかっています。空母をたくさん持つ国は遠慮なく航行でき、そうでない国は他国海軍を気にしながら航行することになります。

沿岸や周辺海域を確保できれば良しとするならば不要です。
潜水艦をどうするかが最大の課題になるので、駆逐艦・フリゲート・潜水艦・対潜ヘリが主戦力になります。航空機は基地航空隊、ヘリ空母・軽空母に搭載された艦載ヘリで十分です。
航空機やミサイルによる攻撃は防空艦で防ぎます。防空艦とは対空攻撃用のシステムを備えた巡洋艦や駆逐艦で、イージス艦などと呼ばれます。
また、空軍の行動半径内に入っているので、その支援を期待できます。
「空母にしかできないこと」はそこにはありません。

外洋の海上支配にしても、「遠慮なく航行したい」というだけなら、空母を持つ必要はありません。空母をたくさん持つ国と親しくするだけで十分です。大抵の国はそれで良しとします。
空母を必要とするのは、自分なりの外洋戦略を展開したい国だけです。

具体例

空母を持つには理由があります。実在の国家を例にあげて説明します。
アメリカはなぜ空母を持つのか
アメリカ海軍は極端な外洋海軍です。本国の沿岸と周辺海域には脅威がありません。そのため、戦力の大半を外洋での活動に振り向けています。7個の現役艦隊のうち、アメリカ本土を担当区域に含む艦隊は2つのみ。1個艦隊はサイバー戦部隊で、残りの4個艦隊は本土から遠く離れた海域で活動します。アメリカ海軍は全世界を攻撃する能力、すべての外洋において海上支配を確立する能力を獲得するため、10万トン級空母を11隻保有しています。
ロシアはなぜ空母を持つのか
ロシア海軍はロマノフ朝以来の外洋海軍です。4個の現役艦隊のうち、北方艦隊と太平洋艦隊は外洋艦隊です。近年は北極海の海上支配を重視しており、北方艦隊に戦力を集中しています。独自の世界戦略を持つロシアは、しばしばアメリカ海軍と対立しています。その他にも多くの国と対立関係にあります。そのため、広大な領土に接する4つの海は安全ではありません。ロシア海軍は独自の海上支配を確立する必要に迫られており、そのために6万トン級空母1隻を保有しています。
中国はなぜ空母を持つのか
中国は列島線構想において、西太平洋を内海にする意欲を示しました。この海域を確保することは、東太平洋、南太平洋、インド洋への進路を確保すること、本土沿岸部や台湾に米海軍が接近することを防ぐことに繋がります。全世界への展開、米海軍の阻止という2つの目的のため、5万トン級空母1隻と7万トン級空母1隻を運用しています。
フランスはなぜ空母を持つのか
フランスは海外領土の防衛、友好国の支援という目的を達成するため、各地に戦力を配置しており、全世界を防衛範囲としています。WW2以来の自主防衛のこだわり、全世界に影響力を行使したいという意思もあります。そのため、4万トン級空母を1隻運用しています。
イギリスはなぜ空母を持つのか
イギリスは海外領土を世界各地に保有しており、全世界を防衛範囲としています。全世界に影響力を行使したいという意思もあります。そのため、6万トン級空母を2隻運用しています。
インドはなぜ空母を持つのか
インドはインド洋における海洋支配の確立を目指しています。この海域を支配することは、本国周辺海域の安全確保、宿敵パキスタンに対する海上優勢の確保に繋がります。南シナ海で中国海軍の影響力が強まっており、これに対抗する必要もあります。そのため、4万トン級空母を1隻保有しています。

どんな空母があるのか

実在の空母を例に上げて説明しましょう。

数万トン級空母

  • 排水量*1:4万~7万
  • 乗員
    • 艦艇運用要員:1200~1800人
    • 航空要員:400~600人
  • 搭載機数
    • 固定翼機:20~40機
    • ヘリコプター:10~20機
    • 総計:30~50機(ただし、大抵は最大搭載数より少なめに搭載します)
実例
シャルル・ドゴール(フランス海軍)、ヴィクラマーディティヤ(インド海軍)、アドミラル・クズネツォフ(ロシア海軍)、クイーン・エリザベス級 (英国海軍)、山東(中国海軍)など。
ただし、クィーンエリザベス級は排水量6万トン、最大搭載機数60機という巨艦でありながら、主としてSTOVL機を運用するため、軽空母に分類されることがあります。
現実の運用
外洋への展開、すなわち全世界への展開を視野に入れた海軍(外洋海軍)がこのクラスの空母を持ちます。「沿岸を守ればいい(沿岸海軍)」「周辺海域を守れればいい(地域海軍)」には必要ありません。
海軍大国であっても、このクラスの空母を持たない国はあります。日本、韓国、イタリアなどは世界有数の艦隊を持っていますが、周辺海域を守れれば良しとしているので、ヘリ空母・軽空母で十分です。
アメリカの10万トン級空母と比べるとコンパクトですが、それでもかなりの金食い虫です。建造費はもちろんのこと、運用コストがものすごいことになります。そのため、イギリス、フランス、インド、ロシアといった大海軍でも、1~2隻を保有するのが精一杯です。要するに大国のみに許された贅沢です。
空母航空隊編成例
戦闘/攻撃手段として2個戦闘攻撃飛行隊、警戒手段として1個早期警戒飛行隊、対潜/輸送手段として1個輸送飛行隊、対潜/救難手段として1個救難飛行隊を持ちます。
機種機数(1個飛行隊あたり)ユニット数用途備考
艦上戦闘攻撃機10~142対艦・対地攻撃
空中戦
攻防の主力です。攻撃機と戦闘機の役割を同時にこなす。そんなマルチロール機は現代の主流です
早期警戒機2~41早期警戒レーダーを積んだ飛行機です。航空隊の目や耳の役割を果たします
輸送/対潜哨戒ヘリコプター2~40~1輸送
対潜哨戒
大型ヘリコプターです。輸送、対潜哨戒などに用いられます
救難/対潜哨戒ヘリコプター2~41~2救難
対潜哨戒
中型ヘリコプターです。戦闘救難、対潜哨戒などに用いられます。輸送ヘリ飛行隊を置かない場合、この飛行隊が2つになります

これはあくまで1例です。戦闘攻撃機の割合がより高い航空隊、ヘリコプターの割合がより高い航空隊、表に記載のない機種を保有する航空隊もあります。

10万トン級空母

  • 排水量*2:10万~
  • 乗員
    • 艦艇運用要員:2000~3000
    • 航空要員:2000~3000人
  • 搭載機数
    • 固定翼機:50~60機
    • ヘリコプター:20~30機
    • 総計:70~90機(ただし、大抵は最大搭載数より少なめに搭載します)
実例
ニミッツ級(アメリカ海軍)、ジェラルド・R・フォード級(アメリカ海軍)など。
現実の運用
このクラスの空母を運用しているのはアメリカ海軍のみです。他国は数万トン級空母を1~2隻運用するのがせいぜいなのに、アメリカは10万トン級空母を11隻も運用しています。艦体の大きさは搭載機数に比例します。アメリカの空母は他国空母の倍の航空機を搭載できるので、1隻あたりの攻撃力は2倍です。そして、戦力相応のコストが掛かります。アメリカ以外の国には負担できないレベルの額です。
自国の防衛という観点のみで考えるならば、明らかに過剰戦力です。まず、こんなでかい空母はいりません。持つにしても、大西洋岸に1隻、太平洋岸に1隻置けば、これに手出しできる国はありません。
アメリカがなぜこんな怪物空母を11隻も保有するのかと言うと、7つの海における海上支配の確立を目的としているからです。これだけの航空戦力を外洋に展開できる国は他にありません。これだけの航空戦力を渡洋遠征させられる国は他にありません。
フランス、ロシア、イギリス、中国といった海軍大国でも、10万トン級空母1隻を相手取ることすら困難です。
空母航空隊編成例
戦闘/攻撃手段として4個戦闘攻撃飛行隊、電子戦手段として1個電子攻撃飛行隊、警戒手段として1個早期警戒飛行隊、救難/輸送/掃海手段として0~1個支援ヘリコプター飛行隊、対潜哨戒/対艦攻撃手段として1~2個艦載ヘリコプター飛行隊、輸送/補給手段として1個輸送飛行隊/飛行分遣隊を持ちます。
総機数はおよそ60~70機。このうち、作戦機は40~50機。小国の空軍に匹敵する規模です。
空軍はその性質上、全戦力を1か所に集結することはできません。防空網を維持するため、一定数の戦力を各空域に配置する必要があるからです。総数で空母航空隊を上回ることは容易です。
しかし、局地的に集中できる戦力においては、空母航空隊に及びません。空母1隻の行動半径という狭い範囲に、小国の空軍並みの戦力を集中できる。これが10万トン級空母の航空隊が持つ強みです。
機種機数(1個飛行隊あたり)ユニット数用途備考
艦上戦闘攻撃機10~144対艦・対地攻撃
空中戦
攻防の主力です。攻撃機と戦闘機の役割を同時にこなす。そんなマルチロール機は現代の主流です
電子戦機4~61電子妨害
電子攻撃
撹乱用の戦力です。電子的手段により、通信やレーダーを妨害します。通信が遮断されると、指揮統制が失われ、敵はバラバラになります。レーダーが撹乱されると、敵は情報を得られなくなります。電子戦機の役割は地味ながら重要です
早期警戒機4~61早期警戒レーダーを積んだ飛行機です。航空隊の目や耳の役割を果たします
多用途支援ヘリコプター4~80~1救難
輸送
掃海
中型ヘリコプターです。捜索救難・輸送・掃海などに用いられます。配備されない場合もあります
多用途艦載ヘリコプター4~81~2対潜哨戒
対艦攻撃
中型ヘリコプターです。対潜哨戒、対艦攻撃などに用いられます
艦上輸送機2~41輸送
補給
輸送機です。地上基地と洋上の空母の間の補給路を確保する手段です

これは米軍空母航空団の編成そのままです。現状において、この規模の空母航空隊を運用できる海軍はアメリカ海軍のみです。ですから、比較対象がありません。

空母機動部隊とは何か

どんなに強力な艦艇でも単艦では無力なので、艦隊を組んで行動します。空母を中核とする艦隊は空母機動部隊と呼ばれます。

空母機動部隊に必要なもの

戦闘艦艇
空母を脅やかすものは2つあります。
1つは潜水艦です。あらゆる水上艦にとって、海中からの攻撃は脅威です。これを防ぐため、空母機動部隊は対潜艦や潜水艦を用意します。
1つは対艦ミサイルです。あらゆる水上艦にとって、アウトレンジから飛んでくるミサイルは脅威です。これを防ぐため、空母機動部隊は防空艦を用意します。かつて、ソビエト海軍はミサイル駆逐艦やミサイル潜水艦を大量に用意し、ミサイルの飽和攻撃によって、米軍空母機動部隊を粉砕しようと考えました。低コストで空母を粉砕しうる戦術の登場は、米国を恐れさせ、イージスシステムの開発を促しました。

潜水艦、対潜艦、防空艦は攻撃手段としても活用されます。対艦・対地火力を備えているので、余裕があれば攻撃に加わります。
補給艦艇
艦艇が行動するには物資が必要です。空母は単体で2000人から5000人が乗り組み、随伴艦もそれぞれ数百人の乗員がいます。これを養うための物資は膨大です。大量の燃料や弾薬も必要となります。これらを輸送/補給するため、空母機動部隊は補給艦や輸送艦を用意します。

空母機動部隊編成例

アメリカ海軍の空母打撃群を例として説明します。
艦種排水量役割
空母100000~1航空攻撃
ミサイル巡洋艦100001〜2防空中枢
ミサイル駆逐艦90002~4防空
対潜
攻撃型原子力潜水艦80002~3対潜
補給艦
戦闘支援艦
給油艦
貨物弾薬補給艦
40000~500001~2補給

世界最高クラスのハイスペック艦揃いで、贅沢極まりない編成です。空母抜きの戦力でも、これに対抗しうる海軍は五本の指で数えられる程度です。
他国の空母機動部隊はここまで贅沢ではありません。それでも、虎の子の空母を守るため、自国で最優秀の艦艇を配備します。